湖の謎多きモモアさん

一昨年完全に予定が崩れてしまった分、去年の後半は人と会う機会が増えました。

初めて会う人もたくさんいましたが、いろんな人がいて、そのほとんどはとても良い人たちでした。

その人、そう、仮名をモモアさんとします。中性的な名前がいいと思ったので。どうしても想像上のルックスが必要そうな場合は、俳優のジェイソン・モモアさんを思い浮かべてください。

モモアさんはもともとは海外で暮らしていたそうです。コロナのこともあって、最近日本に戻ってきたんだって。で、普段はかなりの田舎に住んでいるけど、仕事に合わせてたまに東京へとやってくるそう。

何回もモモアさんに会うことになったのですが、モモアさんのライフスタイルというのがあまり見えてこないんです。

でも、オタクの人と会うときは、そういうのって関係ないですよね。たぶんこの人働いてるんだろうな〜とか、なんとなくデザイナーかな?とか分かるけど別に気にしないですよね。モモアさんは別にオタクではありませんが、そのときのノリでわたしはあまりモモアさんの人生について気にしませんでした。モモアさんとは仕事の関係で会ったんですけど。

が、話の弾みで、普段は何をして過ごしているの?という話題になったとき、

「休日はね、湖のまわりを散歩しているよ」

とモモアさんは答えてくれたんです。

そっか。モモアさんは湖のある県に住んでいるんだった。素敵だな、たまにはそうやって湖をゆっくり散歩するというのも素敵な過ごし方だよな。とわたしは思いました。

「じゃあ、他の日は何をしているんですか?湖の他には?」と聞いたところ、

「他の日も、湖のまわりを散歩しているよ」とモモアさんは答えました。

えっ?毎日?休みは毎日、湖のまわりをお散歩……?

そんなことってある?いや、あるのかもしれない。毎日の運動とかで、朝か夜に歩くことにしているとか。そういうことは考えられるけど。

モモアさんは、たぶんわたしに話す気がないのです。湖のこと以外。なんとなくそんな気がしました。

わたしが嫌われているという可能性があるかもしれませんが、モモアさんのことは、他の人も、「あの人って自分のことは喋らないから」と言っているのを聞いたことがありました。

モモアさんとの付き合いは続いていますが、じわりと湖の水がまわりの土に染み出すように、少しずつモモアさんのことを知っていくか、

あるいは、湖の水が決して絶えないように、謎のままのモモアさんと良き仕事のお付き合いをしていきたいと思います。