熾烈なピアノ大戦争

ピアノ、弾いてますか?わたしは五億年弾いてません。

ピアノは非常にポピュラーな楽器で、誰しもが触ったことがあるんじゃないかと思います。間口が広いんです。

座って真正面から楽器に向かい合うという、とても人間に適した形と奏法をしていて、楽器の中では一番と言っても良いほど、長い時間弾いていられる楽器だと思います。ヴァイオリンやフルートは体がねじれているけど、それに比べて、ピアノは書類を書くようなかたち、自然な格好でみんな弾いてますよね。

やってる人口が多くて長い時間弾ける。するとどうなるか。

人類のピアノ・レベルが天元突破します。

わたしたち人類は天元突破してきたのです。いくらでも練習でき、やってる人口が増えれば増えるほど技術というのは磨き上げられる。もっと上、もっと上…と求めるのです、人類は。人間の学習意欲というのはほとんど病的です。

音大に入学する人数も、当然ピアノが一番多いです。ピアニストを求める場はとても多いけど、ピアニストというのはもっと多い。競争は苛烈です。

知り合いは音大を卒業しているらしいのですが、その人間の卒業した学校にはピアノ専攻とあとは声楽のみ、特殊なクラス分けがされていたらしいです。

ピアノ専攻

ピアノ演奏専科

ピアノ演奏専科・ヴィルトーゾ

(これはママではなく、こんな感じ〜というイメージです)(声楽はピアノのところが声楽になっている感じです)

入学試験の試験結果如何によって、ピアノ専攻かピアノ演奏専科かに振り分けられます。ピアノを専攻する学生のうち、試験で全体の上位何%かに入ると、ピアノ演奏専科に入れます。

「◯◯ちゃんはピアノなの?」

「うん!××ちゃんも?じゃあ同じだね。一緒に頑張ろうね!」

とか言っていても、相手が演奏専科で自分がただのピアノ専攻なら、相手の方がずっと点が良かったということなのです。

そしてこれは、入学してからもグレードアップ・グレードダウンされるのです。定期試験の結果によって。

試験で上位何%かに2回連続で入ったなら、ピアノ専攻の者でもピアノ演奏専科へグレードアップの申請ができ、

逆にピアノ演奏専科の者でも、2回連続で上位何%かに入らなかったなら、ピアノ専攻に落とされます。

なのでピアノ科は常時ギスついていました。

演奏専科の学生は上手いだけあってプライドが高く、「ピアノ専攻じゃ卒業したってやっていけない。ピアノをやる意味がない」とか言うのです。

ピアノ専攻の学生は、それを聞いて「……………」になってしまうのです。他の専攻の学生は、ちょっとやめなよと言うことも、そうだよね〜!とか言うこともできず、黙って下を向くのみ。

試験で良い点が取れなかったとしても、ピアニストとしてやっていく道が途絶えたわけではありません。が、ここで上位に入れなくて、このピアニストが溢れた世界でどうやって食っていくのかということを、若い学生なので誰も説明できないんです。

この制度に反発してか、馬鹿馬鹿しくなったのか、点数がかなり良いのに、自分は演奏専科へのグレードアップを申請しないというスタンスを示すピアノ専攻の学生さえ出てきていました。

 

ピアノ専攻の上がピアノ演奏専科なら、それにヴィルトーゾってのがついたら、どうなっちゃうの?

柱にでもなっちゃうわけ?

と思われた方もいるんじゃないでしょうか。

そう、上澄みの上澄みの上澄み、それがヴィルトーゾでした。入学時からこの子はヴィルトーゾ!と組み分けされて入ってくるのですが、ピアノ演奏専科のうち、ものすごーーーく成績がよくて目覚ましい出来だったりすると、たまーーに昇格できます。ですが稀でした。同期生に何人かしかいないんです。すでに演奏家として活躍していたり、途中で留学したりする学生が多いようです。

ステータス名札をつけて歩いてるわけではないので、他の専攻からすれば誰が演奏専科で誰がヴィルトーゾとかはわかりません。

「ピアノって大変だよね…試験も大変だしね…」

「何が大変なの?早起きが?」

「えっ?」

「試験って朝早いから?」

みたいなことを言ってる奴、ヴィルトーゾでした。みたいなこともあります。大変ポイントは朝早いとかじゃないのよ。

ヴィルトーゾなのに連日カラオケ、連日朝まで酒飲む。練習は一体いつ…??みたいな人もいるんだそうで。

なんか社会って感じですね。

アハハ